削蹄塾 わたりがらす ジャパン・メソッド-新しい削蹄法を目指して-
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ヒールレスセオリー

 

 

ヒールレスセオリーの理由

 蹄底潰瘍・白線病の原因の多くは蹄葉炎に求められていますが、機械的な力が最後の引き金を引いていると思います。それは、内外蹄の高さの差によって起こる深趾屈腱の弛緩に原因があると考えます。

これは蹄鞘の中にある蹄骨・深趾屈腱・蹄球枕の関係を表しています。蹄骨の先端部下には蹄球枕がなく蹄鞘に固定されています。

負重を蹄関節から受けた蹄骨は沈み、蹄底角質・知覚部を通して床からの反圧を受けます。

しかし、深趾屈腱が吊り上げるので反圧の多くが蹄尖部にかかります。つまり、てこの原理で持ち上げているので、蹄骨後端部にはそれほど大きな圧力はかかりません。蹄踵になんらかのトラブルを抱えて牛床のへりに立っている牛は、この原理で立っていることになります。

蹄の蹄骨屈腱接合部を後方から見たところを模式図で表しています。深趾屈腱は球節で内外蹄に分かれますが、その上では一本になって屈筋に繋がっています。それを、黒い二等辺三角形につながる白い帯で表しました。仮想圧力版は内外蹄に均等に加わる負荷の様子を表すために用いました。今、蹄は宙に浮いているところなので各部には何の力も加わってはいません。

牛は踏着直前に関節を固定するため、深趾屈腱を緊張させます。蹄骨の後端部を吊り上げる力がかかります。

踏着した瞬間、大きな力が各部に加わります。蹄骨の後端部は沈みますが、蹄球枕が圧力を吸収し深趾屈腱が十分吊り上げるので、真皮には問題は起こりません。

静止して立っている状態を表しています。内外蹄で均等に負重しています。

これは後肢で、外蹄の高い蹄を模式図で表したものです。宙に浮いている状態では各部に何の力もかからないので、蹄骨の位置はほぼ同じです。

到着の直前に関節を固定するために深趾屈腱を緊張させます。

高いほうの外蹄が先着します。蹄球枕が圧力を吸収し、深趾屈腱で蹄骨の後端部を吊り上げます。真皮に挫傷は起きていません。

外蹄踏着後すぐに内蹄が踏着しますが、内外蹄の高さに差があるため内蹄は蹄尖部だけで負重します。内蹄の深趾屈腱は緊張し蹄骨の後端部をしっかり吊り上げますが、外蹄の深趾屈腱は弛緩し蹄骨後端部を十分には支えられません。そのため蹄関節から受けた荷重を蹄球枕で支えなければならなくなります。

この状態が長く続くと蹄球枕は蹄球後方に押しやられ、蹄骨後端部の直下には不十分な厚さしかない状態になります。その結果蹄球枕による圧力の吸収が不十分になると蹄骨と蹄底角質にはさまれた真皮が挫傷を起こします。

挫傷を起こした真皮は正常な角質を作ることができなくなり、この状態が続くと外界と貫通する亀裂ができてしまい、著しい疼痛を伴う蹄底潰瘍になります。

 
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